今や世界最悪と言われる程、深刻な大気汚染国であるインド。
なぜ大気汚染がここまで深刻なのでしょうか。
今回はインドが大気汚染国である原因や大気汚染への対策について解説します。
インドで健康を維持するためにもぜひ大気汚染についてしっかりと理解&対策してほしいと思い、今回まとめました!
動画での解説はコチラ
大気汚染が深刻化しているインドの街についても臨場感たっぷりにお届けしています。
ぜひ合わせてこちらの動画もご覧下さいね!その他インドに関してはコチラ⇒【Youtube動画】をチェック!
インドは世界最悪レベルで大気汚染が深刻な国
各メディアでも報道されているように、インドの大気汚染の深刻さは世界最悪レベルと言われています。
TIMES OF INDIAの報道によると、世界保健機関(WHO)の調査結果では、世界で最も大気汚染が進んでいる15都市のうち、14都市がインドにあると言われています。
中でも、首都デリーや近郊の都市グルガオンが世界最悪レベル。
中国(北京)の約2.5倍の濃度ともいわれています。
この汚染が原因で、慢性的な咳やぜんそく、ひどいケースだと肺がんなどを引き起こすケースも。
また、The Economic Timesの報道では、ある専門家は「the impact of air pollution on public health can be compared to smoking of 15-20 cigarettes a day.(大気汚染が公衆衛生に与える影響は、1日に15~20本の喫煙に相当する)」とも伝えています。
スモッグに覆われたインドの街中
写真は午後2時頃のグルガオンの様子。
日中にも関わらず、大気悪化の影響で全体的にどんよりとしています。
数メートル先がスモッグで霞み、向かい側にあるビルや車体さえはっきりと見えない状況。
2019年11月初旬、デリーでは過去最悪の大気汚染を記録。
大気状況をリアルタイムに観測できるアプリでは、デリーのAQIは1100超えという異常値を記録。
インドの首都デリーから約30kmに位置するグルガオンでも、AQI600近くを記録しました。
日本ではあまり馴染みないものの、世界中各国や地域で採用されています。
この数値が高いほど大気汚染が激しいとされています。
AQIは6段階設けられており、100という数字が健康影響の重要な判断基準とされています。
実際の外の様子はこちら。
この大気のひどさに耐えかねて、インド人も口元を布で覆ったり、マスクを装備している姿がいつも以上に見受けられました。
大気汚染の原因とは?
いくつか理由がありますが、ここでは大気汚染を引き起こす主な原因について、解説します!
【原因①】ディワリでの《爆竹・花火》
インドでは「ディワリ明けから大気汚染が深刻化する」とよく言われています。
まさにその通りで、例年ディワリ直後から大気汚染が一気に深刻化しています。
原因のひとつが《ディワリでの爆竹の煙」》
インドでは毎年秋(10月下旬~11月中旬頃)に、ヒンドゥー教の新年のお祝い《Diwali(ディワリ)》が開催。
ディワリ時にはお祝いの意味を込め、インドの街中で爆竹や花火が打ち上げられます。
この煙こそが大気汚染を深刻化させている大きな原因のひとつとされています。
また、インド北部では雨季が過ぎた秋頃は雨が降らず、気温も20度台と夏に比べ低下。
そのため、ディワリシーズンで発生した煙などの汚染物質が滞留しやすくなり、大気汚染に拍車をかけています。
ディワリについての記事もあるので、ぜひ合わせてご覧ください!
【原因②】周辺農地による《野焼き》
農地での焼き畑(野焼き)は、大気汚染の大きな原因のひとつとされています。
インドのような熱帯地域では、二毛作や焼き畑(野焼き)は未だ伝統的に行われている農法で、北部プンジャブ州やハリヤナ州の農地では、麦や米、サトウキビなどの農作物の収穫後、残処理と再植を目的に毎年10~11月に野焼きを行うとの事。
こうした野焼きから発生する煙が大きく大気汚染に影響していると指摘されています。
温暖な地域で行われる方法で、インドでも古くから取り入れられている方法。
【原因③】自動車の排ガスや工場からの排煙
デリー首都圏近郊では、毎日数百万台にも及ぶ自動車が行き来し、大量な排出ガスが発生しています。
経済成長に伴って増加した自動車の排ガスは、インドの大気汚染を引き起こす大きな原因のひとつ。
その他、近辺の工場や火力発電の排煙や建設ラッシュにおける建設現場のほこりなども原因とされています。
自動車最大手であるマルチ・スズキもこの規制を受け、2020年にディーゼル車から段階的撤退するなど各社対策を行っている。
大気汚染への対策~インド政府~
深刻な大気汚染が大きな課題のインド。
インド政府は具体的にどのような対策を行っているのでしょうか?主な事例をご紹介します!
【対策①】ディワリ時の爆竹使用への制限
経済成長につれ、環境への意識が年々強まっているインド。
近年は《グリーンディワリ》がうたわれており、爆竹への規制が進んでいます。
大気汚染への影響を理由に、2017年頃からディワリ時の爆竹使用規制が厳しくなっています。過去にはインド政府が爆竹関連会社へ販売禁止を促し、反発が起きた事も。
ただし現時点では、爆竹は完全使用不可というわけではなく、使用時間を「当日夜8時から10時の間」と規制する方向で動いています。
警察による規制にも力を入れているものの、全インド国民に規制を徹底させるのは現時点ではなかなか厳しいというのが現実。
【対策②】農業への野焼き禁止
実は大気汚染が課題となっているハリヤナ州含むインドのほとんどの州では、野焼きは既に法律で禁止されています。
また、パンジャブ州やハリヤナ州では野焼きを実施せず機械による収穫後の処理を推奨すべく、農家への教育や補助金も支給しているとのこと。
法律で禁じられているものの、実際には農家への大気汚染に対する教育不足や貧困により、まだまだ野焼きを続けている農家が多くいます。
【対策③】排ガス減少のための車両規制を実施(2016年開始)
首都圏近郊では、毎日数百万台にも及ぶ自動車が行き来し、大量な排出ガスが発生しています。
インドの大気汚染の原因のひとつに、経済成長に伴って増加した自動車の排ガスがあると言われています。
デリー首都政府では2016年より、排ガス減少のための車両規制を開始。
規制ルールとしては、日曜を除く11月4日(月)~15日(金)までの期間、奇数の車両は奇数日にデリー道路で走行が許可され、偶数の車両は偶数日に許可されるというもの。
時間としては、午前8時から午後8時までデリーにて適用とのこと。
Rules: Starting from November 4, odd-numbered vehicles will be allowed on Delhi roads on odd dates and even-numbered vehicles will be allowed on even dates. The car rationing scheme will run till November 15. The rule will be applicable in Delhi from 8 am to 8 pm, except on Sundays. It will be the third time that odd-even scheme will come into force in Delhi.ーlivemint記事より抜粋ー
【対策④】大気汚染による休校・建設工事の禁止を発表
2019年11月、大気汚染の深刻さを理由に「ニューデリーにある全学校を休校とする」と、ニューデリーの行政当局が発表。
実際に11月5日(火)まで自宅待機となっています。
また、予防策としてPM2.5対策の高機能マスク500万枚を子供へ配布。
同時に、PM2.5の発生原因となる粉じんを防止すべく、首都及び周辺の建設工事を同期間禁止しています。
大気汚染への対策~個人向け~
【対策①】大気汚染アプリで常に状況把握!
まずは現状把握からスタート!
気象データをリアルタイムに測定できるアプリをインストールする事をお勧めします。
常にご自身がいる場所がどのような状況なのか、可視化する事が大切!
おすすめアプリ「Air Visual」
Air Visualは世界1万都市以上の大気質と気象データをリアルタイムに把握可能な無料アプリ。また、収集データを基に予報も可能(iOSとAndroidにてダウンロード可能)
Air Visual社の広報担当者は「リアルタイムの大気質指標を提供することで、利用者が自身の健康を守り、大気汚染に対する認識を高めることに繋がっている」と話しています。(VOV掲載記事より参照)
私もこのアプリは毎日愛用しています!インド人スタッフ全員にもこのアプリをDLとして日々確認しあっています。きちんと可視化して意識を持つ&対策する事が大切ですね。
【対策②】外出時は必ず《マスク》着用!
身近な対策としては、マスク着用!
中でも医療用などの高性能なマスクは、微粒子の吸収を減らす高精度なフィルターを使っている事から、より効果が期待できます。
空気が漏れないよう、ご自身の顔の大きさに合うマスクをきちんと着用しましょう!
可愛いデザインマスクも!
Vog Mask参考
フィルター付きのカラフルな布素材のマスクも!
メーカーによりデザインは異なりますが、素材もしっかりしていて顔にもしっかりと隙間なくフィット。
ファッションとしてもおしゃれ!
値段はメーカーやサイズにより異なりますが、1500~2000ルピー(約2400~3200円)が相場。
ぜひアマゾンや店頭などでお気に入りの一枚を探してみて下さいね。
インドの邦人向け情報誌でもマスク推奨!
インドの在留邦人向け情報誌・シバンスでも、大気汚染対策としてマスク着用が推奨されています。
中でも、シバンス誌にも掲載されているユニ・チャーム社のマスクは、長時間着用しても耳が痛くならないように設計されていて付け心地◎(個人的にお勧めです!)
【対策③】室内には空気清浄機がベスト!
実は家の中で過ごす時間は、睡眠時間を含めると一番多いと言われています。
室内の空気が汚れているという事は、汚れた空気を吸い続けるという事になりかねません。
家の中の空気こそ、綺麗な空気である必要があります。
そのためにも、空気清浄機を用意して常にクリーンな空気を保つことをお勧めします。
インドの家電量販店やアマゾンなどのECサイトで、空気清浄機は購入可能!
メーカーや対応可能サイズにもよりますが、価格としては1台あたり9000ルピー(約13,800円)~15000ルピー(約23000円)あたりが相場。
私は日本製(シャープ)の空気清浄機を購入!価格は約1万ルピー程でした。少し高い買い物ですが、インドは健康第一!北インドで冬を過ごすなら最低1台は持っておくことを強くお勧めします!
【対策④】手洗い・うがいは徹底的に!
風邪予防と同様、帰宅時の手洗い・うがいは必ずしましょう!
空気中に溢れているPM2.5は、手以外にも衣服にも付着している可能性があるため、部屋に入る前には上着をはらう等もお勧めします。
最後に
今回はインドの大気汚染についてまとめました!
インド政府が年々取り組んでいる課題であるものの、解決への道のりはまだこれから。
しっかりと理由と対策を理解して、より健康なインドライフを送りましょう!
なので、一部(大気汚染の深刻さ)だけを過大に受け止めず、インドの良さを感じてほしいと切に思っています。
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